石鎚山系とは?
標高1,982m、西日本最高峰であり、日本百名山の一つに数えられる石鎚山を中心に、
愛媛県と高知県の県境に沿って、東西約50kmに広がる石鎚山系。
標高1,500m以上の山々が20座以上も連なり、暖温帯から亜寒帯までのはっきりした垂直分布を見せる豊かな森林、
希少な固有種を含む高山性植物と野生動物の宝庫でもあります。
仁淀川、吉野川の2大清流をはじめ、加茂川と「うちぬきの水」の源流地を山懐に抱き、
山間を流れる豊富な水の流れは各所に渓谷や滝をつくり上げました。
四国最大規模の面河渓の渓谷美や程野の滝など、石鎚山系ならではの水の風景も見応えがあります。
石鎚山系の自然・地形・気候について
自然の素晴らしさを体感できる さまざまな魅力に溢れた石鎚山系
岩がねじれ上がったように隆起した険しい山容、笹原に覆われたなだらかな尾根、緑深い原生林の中に続くトレイル、はるか遠くまで見渡せる眺望。石鎚山系は豊かな自然に恵まれ、素晴らしい景観を見せてくれます。 8月の平均気温は石鎚山の頂上山荘では18.17℃、松山市内では29.2℃であり、平地の気温と10℃以上の開きがあります。温暖な四国にありながら頂上付近には亜寒帯性の植生を有し、冬には一面白銀の世界に包まれる。その一方で、春から夏にかけては希少な高山性植物の花が次々と咲き、秋にはブナやカエデが鮮やかに色づく見事な紅葉を楽しむことができるのです。 登山はもとより、トレッキング、トレイルランニング、サイクリング、ラフティングやカヌーなど、様々なアクティビティのメッカとして、年間を通じて多くの人が訪れます。
石鎚山
標高1,982m、日本百名山の一つです。西条市と久万高原町の境界に位置する山で、西日本最高峰。石鎚山系の中心的な山であり、石鎚国定公園に指定されています。主な登山コースは、西条市側からロープウェイを利用して成就社から登るルートと、石鎚スカイラインまたはUFOラインを通って土小屋から登る土小屋ルートがあります。
笹ヶ峰
標高1,860m、日本二百名山および四国百名山の一つに数えられます。山名はなだらかな曲線を描いた山頂部が一面のイブキザサに覆われていることに由来しており、山頂から西側には石鎚山、北側に瀬戸内海、南側には幾重にも重なる山々の向こうに土佐湾を望むことができます。「伊予の三名山」と呼ばれています。
瓶ヶ森
標高1,897m、日本三百名山の一つです。どっしりとした風格を漂わせる瓶ヶ森の頂上一帯はなだらかな平原で、見事なまでに一面がササで覆われています。樅(モミ)や栂(ツガ)などの群生があり、白骨林がひときわ美しい景観を見せ、四国のパノラマ台と呼ぶにふさわしい自然美です。
伊予富士
標高1756m、日本三百名山の一つです。「富士」という名に象徴される雄大な山で、山頂は広くないものの石鎚山はもとより瀬戸内海、赤石山系までの360度パノラマを満喫することができます。
仁淀川
高知・愛媛を流れ、石鎚山の山麓にある「御来光の滝」の付近に源流を持つ川で、愛媛側では面河川と呼ばれています。吉野川・四万十川に次ぐ四国第3の河川。“奇跡の清流”とも称されるこの美しい川の色は、「仁淀ブルー」と表現されています。
面河渓
愛媛県久万高原町に位置する渓谷。青く澄んだ「仁淀ブルー」が話題になり注目を集める高知県仁淀川の上流にあたり、愛媛県の石鎚山の麓近くにあるのが面河渓です。仁淀ブルーと呼ばれる神秘の水は、この面河渓がルーツとなっています。
植生・四季について
標高に連れて植生と景観が変わる まるで季節をタイムトリップする感覚
標高差の激しい石鎚山系では垂直分布により、標高によって植生が異なっています。特に石鎚山では一番低い面河渓(標高700m)から山頂の天狗岳(標高1,982m)まで、約1,300mもの標高差があり、日本の主な植生帯を見ることができます。麓にはウラジロガシやヤブツバキ、中腹にはブナ林に濃い緑色をした針葉樹のモミやツガなど。標高1,000m以上には黄緑色をした広葉樹のブナ林、山頂付近ではササ原や黒っぽい針葉樹のシラベと白樺に似たダケカンバ林に姿を変えていき、その著しい変化に目を奪われます。 麓の初夏は登山口の初春。登っていくに連れて季節が逆行し、山頂では樹氷が見られることもあります。麓の晩夏は山頂の初冬で、春とは逆に季節を先取りします。 一度の登山で2〜3シーズンの季節をタイムトリップするような体験ができるのも魅力のひとつです。
日常生活では 見ることのできない 可憐な花や野鳥に出会える
石鎚山系は貴重な動植物の宝庫。春には山肌をピンク色に染めるアケボノツツジやトサノミツバツツジ。足元にはユキワリソウ、ショウジョウバカマ、イワカガミ。夏はミソガワソウやヤマアジサイ、キレンゲショウマがお花畑を形成し、秋にはミヤマアキノキリンソウやリンドウがトレイル沿いを彩ります。 軽やかにさえずるコマドリやヒガラ、エナガ、ミソサザイ。鮮やかな青色をしたルリビタキや冠をかぶったようなヤマセミ、白い斑点のあるホシガラスなど、平地では見られない野鳥や動物の宝庫でもあるのです。
歴史・信仰について
法螺貝の音色が山に木霊(こだま)する 日本七霊山のひとつ石鎚山
石鎚山は、富士山をはじめ日本各地の霊山をひらいた「修験道の祖」である役小角によって1,300年前に開山されたと伝えられています。その後、寂仙菩薩が石鎚蔵王大権現と称えて深く信仰し、登拝者を集めるようになりました。開山以降、山そのものが神体山として崇拝され、桓武天皇、文徳天皇、源頼朝などの武将や西条藩主、小松藩主からも篤い信仰を集めたという石鎚山。見る人を圧倒させる山頂付近の険しい山容、巨木に囲まれ、どこか荘厳な雰囲気を漂わせる登山道(参道)は、霊山と呼ばれるにふさわしい神秘性を感じさせてくれます。 石鎚神社は山麓にある口之宮本社、石鎚山中腹(7合目)にある中宮成就社、山頂(弥山)にある奥宮頂上社、石鎚スカイライン終点の土小屋にある土小屋遥拝殿の4つの社殿から成り立っています。
全国から数万人の信者が集まる 荘厳な例大祭「お山開き大祭」
毎年7月1日から10日に斎行される石鎚神社夏季大祭は、古くから「お山開き」と呼ばれ、期間中は全国各地から数万人にのぼる信者が訪れ、山全体が活気づきます。7月1日午前7時に「仁」「智」「勇」の三体の御神像が信者の背に乗せられて頂上社へと出発。同日10時に頂上社に到着し、10日間の大祭の幕が切って落とされます。 7月10日に御神像が成就社へ戻るまでの間、山中には「ナンマイダー」という掛け声と法螺貝や鈴の音が響き渡ります。登山道(参道)を白装束を身にまとった信者が往来する様子は、まさに霊山ならではの光景です。